前回は、「Google Analytics 4 (GA4)& ユニバーサルアナリティクス(UA)の用語解説」を記載しました。
用語は、アクセス解析を行う上で基礎となるところですので、まだご覧になられていない方は、是非、復習がてら御覧ください。
今回は、Google Analytics 4(GA4)の基礎として、「どうしてGA4への移行が必要なのか?その背景は?」「UAとGA4の違いは何か?」「いつまでに移行が必要か?」など、基礎的な事を記載していきたいと思います。
目次
何故?ユニバーサルアナリティクス(UA)からGoogle Analytics 4 (GA4)に移行する必要があるのか?
2022年3月にGoogleからユニバーサルアナリティクス(UA)が「2023年6月30日 に計測を終了する」という発表がありました。
初期の旧GAがリリースされたのは2005年(17年以上前)で、今までに多くのアップデートを行ってきましたが、だんだん、ユーザー行動の多様性に適応できなくなったことが理由と言われています。そのため、次のバージョンであるGoogle Analytics 4(GA4)へなるべく早く移行する必要が出てきました。
事前にお伝えしておきますと、「GA4とUAが目的の違う全くの別ツール」になっています。
また、UAの計測データをGA4に移行することができません。
※ 機能やツールの仕様などについては、2022年9月現在の情報を掲載しています。
GAアップデートの背景
Googleアナリティクス(UA)は既に多くのサイトで利用されているにも関わらず、Googleは何故、新バージョンのアクセス解析を開発したのか?
それには、下記の理由があります。
1.モバイルの普及
2.プライバシー規制の強化
3.アプリや動画閲覧の増加
4.後付けによる仕様の限界
一つずつ見ていきましょう!
モバイルの普及
閲覧者(ユーザー)がPCやスマホ、タブレット等、複数の端末でブラウザを使う様になったことで、Cookieが取れずユーザーの行動データーが追いかけづらくなりました。
プライバシー規制の強化
海外の法規制のGDPR(EU一般データ保護規則)、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法[CCPA:California Consumer Privacy Act]の略称)では、Cookieは、匿名化された情報ではあるものの個人情報として取り扱われ、個人情報の保護は年々重視されてきており、今後も新たな法令や規制ができる可能性は否定できません。
UA版では、年を負うごとにユーザーの情報を取得しづらくなっており、特にCookieの利用が制限されつつある中でUAを使っていくことの限界が見えてきていました。
アプリや動画閲覧の増加
webサイトの多様化、アプリや動画などページという概念がないコンテンツが普及してきた事により、ページビュー基準、また、セッションの計測だけでは、正確な計測ができなくなってきました。
例:動画再生ページでの長期滞在など。
後付けで対応してきた仕様の限界
・機能拡張の限界:
インターネットが発展していくなかで、Googleアナリティクスは様々な機能拡張を続けてきましたが、拡張に拡張を重ね、設定も複雑になり、見た目や操作感が限界に近づきました。
・計測データ同士のかけ合わせが困難:
Eコマースやイベントトラッキングなど、後付けで取得してきたデータは互換性やデータ同士の掛け合わせに対して、弱い面も多く、データ構造を整理する必要性が生まれました。
新しいアクセス解析ツール Google Analytics 4 (GA4)とは?
ユニバーサルアナリティクス(UA)の次世代バージョンにあたるGoogleアナリティクスです。
”次世代”とはいえ、部分的な機能追加の範疇(はんちゅう)ではなく、もはや別物ともいえるぐらい違いがある解析ツールとなっています。
1.WEBとアプリを横断的に計測できる
2.Googleの機械学習モデルを活用した予測機能の導入
3.プライバシー重視のデータ収集
WEBとアプリを統合した分析ができる
GA4では、ブラウザやアプリでレポートを分けず、1ユーザーのアクセスとして測定が可能です。
ですので、ブラウザでサイトを閲覧していたユーザーがアプリに切り替えても、アカウントが同じであれば、同一ユーザーという認識ができます。
理由としては、1つの「プロパティ内」「ウェブ用」「アプリ用」と複数の「データ ストリーム」を作成することができるため、横断的な計測が可能になっています。
機械学習を利用した予測機能
蓄積されたデータを使った「予測」ができるようになりました。
※前提として、まだGA4は発展途上のツールであるため、現状の機能で十分な分析ができるわけではありません。予測条件としては、購入ユーザーまたは離脱ユーザーのポジティブサンプルとネガティブサンプルの最小数や、関連する予測条件をトリガーしたリピーターが7日間で1,000人以上、トリガーしていないユーザーが1,000人以上必要です。
1.購入の可能性
過去 28 日間に操作を行ったユーザーによって、今後 7 日間以内に特定のコンバージョンイベントが記録される可能性です。
2.離脱の可能性
過去 7 日以内にアプリやサイトで操作を行ったユーザーが、今後 7 日以内に操作を行わない可能性です。
3.予測収益
過去 28 日間に操作を行ったユーザーが今後 28 日間に達成する全購入コンバージョンによって得られる総収益の予測です。
プライバシー規制を強化
プライバシーポリシー保護の観点を取り入れた計測方法に変更されました。
現在、ユーザーのプライバシー保護がより一層大切になり、重視されるようになりました。Cookie情報の取得制限を始めプライバシー保護の強化によって、UAでは、取得できるデータに不足が発生しています。
GA4は、海外のデータ規制(GDPR:EUの一般データ保護規制、CCPA:アメリカ・カリフォルニア州のカルフォルニア州消費者プライバシー法)に準拠した仕様になっているため、今後、起こる可能性がある変化に対応できるような仕様になっています。
※GA4の変更点の1つに、データ保持期間の変更があります。ユニバーサルアナリティクス(UA)にもデータ保持機能が備わっていますが、GA4では、ユーザーデータの保持期間は最大14ヵ月と限定されています。
(ユニバーサルアナリティクス(UA)は半永久的にデータ保持が可能でした。)
ユニバーサルアナリティクス(UA)とGA4の違い
サイトの「セッション(訪問)」→「ユーザー行動」の分析へ
これまでのUAは「セッション(訪問)」を軸にして分析を行うツールでした。「セッション」の最適化が主な分析で、1回のサイト訪問をどう快適にできるかを考えるためのツールとなっていました。
UAは、閲覧するページに関する指標(ページ/セッション・直帰率・離脱率など)を計測して分析することが可能ですが、「数秒だけページを閲覧した場合」と「ページを最後までスクロールして閲覧した場合」が同じ行動としてカウントされてしまいます。
一方、GA4では「ユーザー」を軸にして分析するツールに変わりました。
これにより、ページスクロールや資料ダウンロードなど、UAでは計測できないユーザーの行動まで分析できるようになりました。また、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)の高いユーザーを分析することができる「ユーザーのライフタイム」や「コホートレポート」のレポート機能が改良されました。
UI 大幅変更
GA4では、ダッシュボードの見た目が大幅に変更され、UIがリニューアルされました。
計測ポリシーの変更
分析指標が「イベント」単位に変更。
ユーザーをベースに分析し、全てイベント単位で計測する事になりました。
Google アナリティクスのバージョン | UA(現GA) | GA4 |
計測単位 | ページ | イベント |
計測方法 | セッション | ユーザー |
イベントとは?
「イベント」とは、ユーザーのサイト内での行動を計測する指標。WEB上でのアクションのこと。
※例えば「ページビュー」も一つのイベントです。
〈例〉
●ページスクロール率
●PDFのダウンロード
●外部リンクのクリック
●ボタンのクリック
GA4で計測できるイベントの種類は、大きく分けて3つ
1.自動収集イベント
2.推奨イベント
3.カスタムイベント
※詳細は別途致します。
イベント単位で計測する事でのメリット
イベント単位で計測することにより、ユーザーの行動を正しく計測できるようになりました。
廃止・変更された指標例
曖昧な概念だった直帰率、離脱率等に変わって「エンゲージメント」という概念が加わる事により、多くの指標が廃止になりました。
UA(現GA) | GA4 |
直帰率 | 廃止 ※従来と計算方法が変わりましたが、復活しました! |
離脱率 | 廃止 |
ユーザーあたりのセッション数 | 廃止 |
ページ/セッション | 廃止 |
ページビュー数 | 表示回数 |
ページの価値 | 廃止 |
コンバージョン率 | 廃止(「コンバージョン」はあります。) ※必要な時は自分で計算: コンバージョン率=コンバージョン÷セッション×100 |
平均ページ滞在時間 | 平均エンゲージメント時間 |
平均セッション時間 | セッションあたりの平均エンゲージメント時間 |
エンゲージメントとは?
マーケティングで用いられる場合は、消費者と自社の商品やサービスとの関係性の強さを指します。
GA4の場合では、ユーザーが行った何かしらの有益な行動を計測することをいい、アナリティクスヘルプによると、下記とされています。
エンゲージメント = 「サイトやアプリに対するユーザー操作」
(引用:アナリティクスヘルプ)
「エンゲージのあったセッション」の定義
※「エンゲージのないセッション」は、コンバージョンもなく10秒未満で直帰したセッションということになります。
※「10秒以上滞在」の秒数は、管理画面から変更可能
GA4で追加されたこと【補足】
Googleシグナルとは?
Googleアカウントを持っているユーザーの情報を用いて、スマホやPCの両方を利用するユーザーの閲覧やセッション行動を匿名の個人のものとして特定することを言います。
もう少し分かりやすく云うと、スマホやPC等、異なる端末を使っても、ユーザーが同じなら同じアクセスと判断してアクセスを解析できるようになり、より正確なユーザー数などが計測できたり、そのユーザに合わせた広告が表示できるようになります。
※個人を特定するCookieに限定されない技術としてGoogleアナリティクスなどで用いられています。
セッション数の違いについて
GA4では、セッションが切れにくくなった影響で、UAよりもセッション数が減る傾向にあります。
CV数の違いについて
UAでは、1セッション(訪問)に対してCVが発生したか否か?というような考え方になり、CVは1として計測されますが、GA4では何回CVイベントが発生したかという考えなので、CVは「何回」として計測されるため、GA4のCV数の方が多くなる傾向があります。
Googleアナリティクス 移行スケジュール
2023年6月30日を待たずに、早目にGA4に移行することをオススメ!
【理由】
・計測箇所の設計や確認など行う場合は、2ヶ月~3ヶ月必要になります。
(UAで計測していた指標を見直す機会でもあり、指標を正しく検討するためにも、3ヶ月程度の期間を設けての移行が推奨となります。)
・早く導入することで、前年同月との比較が可能にもなります。
ユニバーサルアナリティクス+GA4の併用計測を推奨
【理由】
・UAとGA4では、同じ名称でも数値が異なる場合があります。上記の「セッション数」や「CV数」等。
→ですので、双方を見比べながら、どれぐらいの差が出るのか早目に確認して慣れるようにしましょう。
まとめ
今回はユニバーサルアナリティクス(UA)からGoogle Analytics 4 への移行背景と違いを解説致しました。
営業でも、クライアントのサイトに入っているアクセス解析(現GA)を、GA4に移行させる理由や特徴、UAとの違いなど、お客様に簡単にでも説明をする機会があるかと思います。その際、上記のネタを使いながら、スムーズにGA4に移行させて、後々の運用につなげていってください。
- 計測箇所の設計や確認など行う場合は、2ヶ月~3ヶ月必要になります。UAで計測していた指標を見直す機会でもあり、GAでとるべき指標を正しく検討するためにも、3ヶ月程度の期間を設けての移行が推奨となります。
- UA終了までの期間は、ユニバーサルアナリティクス+GA4の併用計測を推奨します。
→UAとGA4では、同じ名称でも数値が異なる場合があるため。 - WebサイトにGTM(Googleタグマネージャー)未導入の場合は、この機会にGTMの導入を強く推奨します。
- 全体的に、GA4 は UA 版の設定よりも知識が必要になり、設定の難易度が上がっています。
GA4の仕組みはUAと大きく異なり、イチから学習する必要があります。
しかし裏を返せば、GA4の解析を先んじて取り組むことができれば、今までできなかったマーケティングの可能性を大きく広げることや、競合他社との差別化も可能になります。
是非、早目にUA→GA4に移行しましょう。
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